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店主コラム

2012年2月28日

「附曳神事って!?」

“おわ〜っ! しもうた〜!!”
大工のAさんは誤って大切なノミを手から滑らせてしまった。
“コロコロ~”“ヒュー ”“ポッチャン!!!”
“うわっちゃ~”“えらいこっちゃ〜!”“よりによって、龍穴に落ちてしもうたがな~”
“あっりゃ~”“何か急に曇ってきたぞ~”“それに風がきつうなってきたなぁ〜”

空は俄かに暗黒色になり竜巻が起こった。

“ビュビュビュビューッツ”“グルングルン”“ポーン!!”
“あ~っつ”“ラッキ~!”“ノミが飛んで出てきたやんけ~!!!”

大工のAさんは大事なノミが戻ってきて喜んだ。
しかし・・・間もなくAさんは帰らぬ人となってしまう・・・
この事件は今から149年前、貴船神社奥宮で起こったといわれている。

ホンマやろか?
ノミが飛んで出てくるんやろか?
龍穴ってホンマにあるんやろか?

1600年前に玉衣姫が大阪湾から黄色い船に乗り、水源地を求めて淀川、鴨川、加茂川、貴船川とさかのぼって奥宮に至り、川の側からこんこんと水の湧き出すところ(龍穴)の上に貴船神社の社殿を建てたといわれている。
日本国中に約500社ある(日本統治時代の台湾等にもあった)貴船神社の歴史はこの日ここからはじまった。
貴船の語源「気生根」(気力が生まれる根源の地)の「気」はこの「龍穴」から発せられるという。
この龍穴には古くから伝わる“オキテ”がある。
オキテその一、龍穴は誰も見てはならない!
オキテその二、龍穴の上をまたいではならない!

このオキテを守るため、奥宮社殿の修理の際には隣接する権地(空地)に社殿そのものを移動させて行う事になっている。
その時には龍穴が露わになるが、もちろん誰も見てはいけないので、社殿のスライドに合わせて白布で龍穴を覆っていく。
社殿を移動させるそのこと自体が儀式であり、それを附曳神事(ふびきしんじ)と言う。

“まるで見たことのように書いとんなお前”とお思いかもしれませんが、実は昨年末の12月29日、実に173年ぶりにその儀式は執り行われた。
貴船の氏子一同でロープを曳いて、社殿を移動させたのである。
まさか自分が附曳神事に関われるとは思いもせんかった!
173年前の附曳神事には当時貴船神社の社家を努めていた先祖の“鳥居右源太正造”(私の5代前1801—1877)が関わっていたことと思うが、この次はまた5代先になるんやろうか?

それで、龍穴はホンマにあったんか?誰か実際に確かめたんか?
実は、神社関係者の二人だけが確認のために龍穴を見たという。
関係者によると、それはタタミ半畳位の大きさで、何故か木屑に被われていたという。不思議に思って木屑を丁寧にどけると、その下は比較的柔らかい粘土質のようなもので覆ってあったそうだ。
龍穴は封印されていた!!!
その封印には触れることなく、人目と風雪を避ける為の小さな祠を龍穴の上に載せて、そのまま養生されている。
奥宮社殿の改修工事が完了し、もう一度附曳神事を執り行い、再び社殿の下に納まる日まで・・・

“気の生じる根源” “大地の気が湧き出す噴出口”(2009年4月のコラムを参照して下さい)といわれている龍穴は実在した!!!
長年の疑問が解消されて(内心あるとは信じていたが)感無量であった。
でも、なんで封印してあるんやろう?
社殿の隣にある船形石も、玉依姫の黄色い船を封印しているといわれているが・・・

ちなみに、173年前の改修時は今回のような修繕ではなく完全建て替えで、貴船奥宮の旧社殿は下村家(現在の大丸百貨店)の手によってJR東福寺駅近くにある瀧尾神社に移築され、本殿として使用されている。この本殿は近年、京都市の有形文化財に指定された。
また、341年前には後水尾法皇の手によって、貴船奥宮にあった鎮宅霊符神(陰陽道最高の神で円融天皇が安倍晴明に付託開眼させた高さ四尺五寸の金剛像)が烏丸鞍馬口近くにある閑臥庵に勧請されていて、今も本尊として本堂に祀られている。
もっと古く、源平時代の奥宮には寝泊まりできる建物がいくつもあって、牛若丸(義経)は鞍馬寺を抜け出してそこに籠もり、源氏の再興を祈願していたという逸話が残っている。
慣れ親しみすぎて、普段は気にもせず過ごしているけれど、あらためて見直してみると貴船神社はやっぱり凄い。義経のように奥宮に祈願して、難関突破と行ってみるか!!!

それにしても、なんで龍穴が封印されているのかがやっぱり気になる・・・何でやろ?
龍穴を覆っていたという木屑と粘土質の物質を調べてみたら、なんかわかるんとちゃうやろうか?

写真1

貴船神社奥宮全景
中央拝殿の奥に社殿、その下に龍穴がある
右奥のしめ縄部分→権地(ここで社殿の改修工事を行う)
左奥のしめ縄部分→船型石(玉依姫の黄色い船を覆う石積み)

写真2

権地(狛犬の奥のしめ縄部分)

写真2

附曳神事で社殿を曵き終えた後、見学の参拝者に挨拶される高井宮司

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