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店主コラム

2010年7月2日

「鏡リュウジさんと」

「ハーパース・バザー日本版8月号」の“京都パワースポット特集”の取材で、占星術研究家の鏡リュウジさんとご一緒した。
鏡さんは生粋の京都人で、ご実家は全国に百以上の教室を持つ、京都でも有数の着物学園を経営されている家柄だ。鏡さんは子供の頃からご家族でよく鞍馬・貴船へお参りに来られたそうだ。
昔、鏡さんのお母様が大病を患った時、鞍馬山で修行していた行者さんに卵をもらって食べたら、たちどころに治ってしまった。しかもその行者さんは全く面識の無い人だったという。そんな事もあって、鞍馬・貴船は鏡さんにとって特別な場所なのだそうだ。
鏡さんはとっても気さくな方で、すぐに打ち解けていろんな話をする事ができた。着物での撮影を終えて洋服に着替えられた鏡さんの袖口に見えたカフスの柄が“直角定規とコンパス”だったので、思わず「それって例の秘密結社のものですか?」と聞いてみたら、「お、解りましたか、そうなんですよ〜」と鏡さん。
「やっぱり、鏡さんもそうやったんですか〜」
「いやいや、これはロンドンの売店でお土産として売っていたんですわ〜」
「ホンマですか〜?それやったらぜんぜん秘密とちゃいますやん!!」
事の真相はともかく、鏡さんの人柄の良さに惹かれて、私はファンになってしまった。
 発売なったばかりのハーパース・バザーをめくってみると、京都パワースポット特集は十一頁にも亘って紹介されている。特に、鏡さんと聖地研究家の鎌田東二さんの対談記事はとても楽しい。
 鎌田さんは’80年頃、鞍馬弘教の研究のため鞍馬山に泊まり込んだ事があり、夜中に木の根道を歩いて、龍神池や魔王堂に行ったという。義経もここで修行したのだから、私もしなければ!と思ったそうだ。夜中のこの辺りの霊気はスゴいですよ!と書いてある。
夜中に魔王堂・・・そんなコワい事、地元民の私でも出来ませんて!!
そういえば、鞍馬寺に努めている親戚が「仕事で鞍馬寺に泊まったら、夜中は賑やかなんや!」と言っていたが・・・
昼間でも、本堂の前で参拝者が急に倒れたかと思ったら、倒れたまま意味不明の事を言いながら暴れたりして、仕方なく救急車を呼んだ!なんて事が年に1、2回はあるという。そういう風になるのは決まって女性で、殆どの場合は暫くすると落ち着いて何事も無かったかのように収まるそうだ。
 子供のころからの遊び場だった鞍馬山では、偶然で済ますにはちょっと不思議なことがたまにある。知り合いの凄腕写真家と同行したとき、雨模様やったのにレンズを向けたとたん光が差し込んだり、風がぐわ〜んと吹いて樹々の枝葉が揺れたりして、とても幻想的な作品が撮れたのだが、そんな状態が二時間も続いた事があった。そして、その画像を納めた写真家のマックは何故か壊れてしまった。写真家によると、撮っても撮っても被写体が目の前に現れて大変だったらしい。そしてその夜、階段を延々と登り続ける夢を見たという。
 それにしても、今、私の地元である“鞍馬・貴船”は空前のパワースポットブームである。鏡さんによると、鞍馬寺本堂前の六芒星には行列ができているらしい。ウチの板前の若い衆も、貴船側から鞍馬寺へ向かってすぐのところにある巨大藤蔓を携帯の待受け画面にすると“パチンコ必勝”とか言っている。残念ながら教育を誤ってしまったようだ。
 鏡さんと鎌田さんの対談は、「パワースポットって、そもそも何ですか?」で始まる。鎌田さんによると、80年代後半に、聖地信仰の火付け役となった天河がパワースポットの震源地だという。聖地と呼ばれる場所には条件や共通性があって、それは地質や地形に関係している。当然だが、人間が勝手に作ったものではない。
・・・実は、天河(吉野一帯)と貴船には地質的に繋がりあって、その証拠に貴船石と吉野石は同質の物だ。
(これについては改めて書きたいと思う)・・・
 対談の結びでは、「パワースポットが大ブームとなって消費されてしまうと、土地土地の固有性等が破壊されてしまう心配がある反面、パワースポットを通して歴史や文化を見直すきっかけになれば良いし、そうなれば経済効率だけで聖なる場所を壊すこともなくなるはず」と締められている。
う〜ん、深くてありがたいお言葉だ。地元民を(勝手に)代表して御礼申し上げます。
 気生根(きふね)は気力の生じる根源の地。1600年の歴史を持つ「気生根」は今で言うパワースポットの語源のようなものだ。
昔の人は、理屈ではなく感覚で聖地(パワースポット)を見つけ、聖域として信仰してきた。今日のパワースポットブームは、現代人にも、まだその感覚が生きている事を証明しているのではないだろうか?

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ハーパース・バザー日本版8月号表紙

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ハーパース・バザー  貴船の記事

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ハーパース・バザー  貴船の記事

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