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店主コラム

2008年 4月 9日

「サービス業って・・・」

旅の締めくくりに、シアトルを訪れる事にした。
19年前、親戚が料理長を勤める日本料理店を手伝えと言われ、少しの間住んだことのある街だ。
ここは地形が神戸に似ていて、海と湖と緑に囲まれた自然の中に都市がバランス良く共存している。マイクロソフト、ボーイング、スターバックス、エディバウアー等の本社があって、イチローが活躍するマリナーズの本拠地でもある。

それにしても、物価が19年前の倍を超えている!
2ドル99セントやったテリヤキ弁当が6ドルもする。
空港の案内表示は英語と日本語やったのに、韓国語になっとる!
でも考えたら当り前か?この間日本はバブルが崩壊して、物価上昇どころか、デフレやったんやもんね・・・

昔を懐かしんで、プラプラしてると、面白い乗り物を発見した。
船にタイヤを付けたような車で、白いボディにオレンジ色で大きくDUCKと書いてある。
観光客を乗せているみたいだ。ひょっとして、あれで水上を走るってか?
車好きの私は乗ってみる事にした。受付でチケットを買い、パンフを見て驚いた。 なんと、その車は第二次世界大戦で敵地に上陸する為に開発された、兵器だったのだ。
ようするに、これって硫黄島占領に使われたやつやろ!
此度の旅は、どうも戦争を思い起こさせるなあ・・・

座席に座って待つこと暫し、運転手が乗り込んで来た。おもむろにCDをセットして、ちょっと古めのポップスを流し始める。
おっさんはえらいハイテンションだ。頭にカニの帽子をかぶってジョークを連発している。 曲に合わせて右手を頭に左手を胸に、右手を腰に・・・客にダンスを強要している。ノリが悪いと、ビートに合わせてブレーキをカックンカックンさせて、嫌でも踊らせる。
最初の違和感はすっかり忘れて、気がついたら私もノリノリになっていた!
ふと横を見ると、隣のトラックの運ちゃんも合わせて踊っている!
上り坂にさしかかると、DUCKは周りの車についていけない。おっさんは曲を「ロッキーのテーマ」に替える。頑張れDUCK!もうすこしや!
そして、いよいよ着水の瞬間、聞こえてきたのはアポロ宇宙船のカウントダウン。スリー・ツー・ワン・ゼロ・・・歓声の中、ふわりと浮いたDUCKは、軽快に湖を走る。映画「めぐり逢えたら」でトム・ハンクス親子が住んでいたボートハウスが見えたが、8億円で買い取られたそうだ

私はDUCKが気に入った。兵器として作られはしたが、本人(鳥?車?)には関係ない。
むしろ、悲しい歴史を見ているからこそ、カニ頭のおっさんを操って、皆をハッピーにさせているに違いない!この素晴らしい空気を作っているのは、DUCKの魂なんや!
DUCKは60年代の中頃まで、米軍で兵器として使用された後、一般に払い下げられた。 今は人に楽しみを与えるために活躍しているわけだ。
やっぱり、サービス業は最高や! 私も料理旅館業で良かった。

ホノボノとした気分で、今はもう無くなってしまった日本料理店の周りを散歩する。
以前、食後の仏式コール珈琲が楽しみで良く来たベトナム料理店でチャウメンを食べていると、窓からアメリカ長距離鉄道アムトラックのキング・ステーションが見えた。あい変わらず、時計塔は故障している。
底に練乳と氷が入ったグラスに落ちる珈琲は、ドリップがゆっくりなので、最初に注文しておく。でもいつも、待ち切れずにスプーンでゴリゴリやってしまって、粉をグラスの中に落としてしまう。またやってしまった・・・

キング・ステーションの時計塔と、私の精神年齢は、止まったままでした・・・と日記には書いておこう。

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