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店主コラム

2006年 9月 1日

「ブラック・スライド・マントラと園城寺」

先日、滋賀県立近代美術館の「イサム・ノグチ-世界とつながる彫刻-」展を見に行って来ました。この展覧会の事を聞いたとき、重い石の彫刻をどうやって運ばはったんやろう?凄いなあ~絶対見に行こ~と思いました。昨年オープンした札幌のモエレ沼公園には未だ行けていないので、よけいに見に行きたい、見に行きたいと思っていました。しかし、ようやく時間を作って行ってみると…期待が大きすぎたのか、前評判はええんやけど、実際は全然面白くない映画を見た時のような気分になってしまいました…
ニューヨークと牟礼で見た時にはメチャクチャ興奮したのですが…。気を取り直してもう一周して見てみましたが、やはり感動できませんでした。
私の場合、美術館めぐりで感動できるのは、良い映画に出会う事よりもずっと確立が低いので、こんなもんやと気を取り直して、いつも行く神戸のステーキ屋さんに向かいました。こういう時に、冒険心で新規開拓して、食事まで外したら大変やし、絶対安心な店に向かうのがお約束です。
ドライブしながら、大好きなイサム・ノグチとその作品の事を考えていると、東京国立博物館に収められている、利休が初めて切った竹の花入れ「園城寺」の事が頭に浮かんできました。博物館では千家の名物として、大切に収蔵されていて、何の不都合もないと思われていますが、私の茶の師匠によると、とても可哀想な花入なのだそうです。それは、もう何十年も花を入れてもらっていないからです。美術品と茶道具の根本的な違いは、公開して目に触れさせるだけではなく、花入なら、その日の花を茶室の床に生ける事によって初めて生きるというところです。
イサム・ノグチは、家具や遊具、照明器具等の道具もたくさんデザインしています。水の湧き出る手水鉢や、ベンチ状の彫刻等はもちろん、「ブラック・スライド・マントラ」(黒御影石で出来た渦巻き状の滑り台)も使われてこそ生きるものですよね。

そんな事を考えながら、いつものステーキ屋さんに到着。その日の体調に合わせて、フィレはフィレでも、脂っこくて旨みの多い肉か、あっさりしてもたれない肉か、選んで焼き方まで変えてくれるオーナーシェフに、この日はあっさり肉を強めに焼いてもらい、ガーリックライスもあっさり仕上げにして戴きました。鉄板焼きの技術もこのレベルになると芸術です。美術鑑賞のあとは食の芸術で〆です。

後日、幸いな事に、美術館に収蔵されていない私の花入(笑)に、花壇で健気に咲く花を活けてみました。
師匠曰く、東博に心ある(?)館員がいて、園城寺にそっと四季の花を内緒で入れて元気を付けてくれているのならホッとするのだが…

花壇に咲く宗旦木槿

花壇に咲く宗旦木槿

“山里”という銘の鉈籠花入に活けてみました

“山里”という銘の鉈籠花入に活けてみました。

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